last update:2003/4/2

自立社会構築の為の機器普及プロジェクト

委員長挨拶

 

産能大学経営学部

教授 松岡幸次郎

 

 

リハビリテーション医学において、新たな手法、新たな器具の提供により、寝たきり老人の内30%が歩行を獲得し、さらにその内に日常生活が自立している者もいる。

このリハビリテーション手法普及に資するマーケティングの研究により、要介護老人数を削減し、国民生活向上、国家財政確立に資する目的で研究を行った。当該リハビリテーション手法の普及を促進するため、二年間の研究を実施した。

 介護から自立に向けた社会構築の必要性は認識されているはずが、現状では社会的な認識が乏しく、リハビリそのものに対しても必ずしも自立支援型とはいえない状況にあるとみられる。その中にあって、本研究の対象とした自立支援型リハビリ手法「タキザワプログラムによる創動運動 Takizawa Program for Rehabilitation」は、寝たきり高齢者の30%を歩行可能にした実績にかかわらず、普及が遅々としている。

 ソーシャル・マーケティングからのアプローチは社会的問題解決をめざす立場にあるが、その成果であるイノベーションの普及研究をこのリハビリ手法の普及に応用して、「寝たきり高齢者削減に向けたリハビリテーション手法普及に関する研究」を進めた。

イノベーションすなわち新しいリハビリのアイデアが普及するためには、このリハビリ手法が従来のものにとって替わる相対的有利性が認知されなければならない。また社会システムの規範が介護から自立へと変わり、この手法が規範と両立することが大切である。この手法を理解し使用することが容易であり、さらにこの手法の効果が人々の目に見えることが普及促進の条件である。

E.M.ロジャーズによると、イノベーションの採用者カテゴリーにおけるマジョリティーにまで普及するためには、初期採用者であるイノベーター、アーリーアダプターの採用がなければならない。S字カーブが示すように、イノベーションの存在や機能を知っている人の比率(知覚知識率)が20〜30%に達すると採用の増加につながり、イノベーションを採用する人の比率(普及率)が5%を越えると、急速に普及するとされている。

またイノベーションが個人に採用されるプロセスには知識→態度→決定→実行→確信の各段階を経ることが知られている。有用性を知覚しても社会的規範にそぐわなければ、非好意的な態度につながり、採用決定には至らない。いったん採用して実行されても、革新性が高ければ不協和を生じる可能性が大きく、採用を継続させるためには、不協和を解消させる確信が必要である。

今回の調査でタキザワ式の知覚知識率はまだ5%程度であり、普及の離陸までに程遠い段階であることがわかった。イノベーターは採用しているが、当然アーリーアダプターには至っていない。イノベーションに対する主観的評価をオピニオン・リーダーとして、個人的ネットワークを通して身近な仲間に伝達することが強く求められる段階にある。このためには、タキザワ式の有効性証明と患者からの了解、さらには施設全体のコンセンサスが必要である。またリハビリ専門家に対してリハビリの知識・技術情報の収集を支援する方策も必要である。

今回のアンケート調査を通じて450名の回答者があり、その内304名が記名回答を寄せた。調査対象の22.5%に認知が広がり、15.2%の者が特に興味を持ち記名回答を寄せた。学会に参加した者も見られ、イノベーター足り得ると期待している。

さらに、アンケートからも明らかになった効果の明確化に関連して、タキザワ式の有効性証明のため、評価機器・評価方法の研究を行った。生活行為評価表の立案と試行・実施方法の明確化、下肢運動評価システムの改良と患者評価、立位歩行獲得に関する評価標準化の試みである。

一定の成果が上がったものと考察している。

そしてこの研究を通じ、特定非営利活動法人バイオフィリア リハビリテーション学会(会長木村哲彦日本医科大学客員教授)設立及び神奈川県中小企業センター異業種交流グループ「自立社会構築のための機器普及プロジェクト」設立を実現し得たことは欣快とするところである。

 

本プロジェクトへ多くの企業・有志の方々の参加を期待している。